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横浜美術館「佐藤雅彦展」一世風靡したCMや「だんご3兄弟」の背景にある「作り方」とは?ピタゴラ装置も

「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」開幕

「リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」開幕

横浜美術館がリニューアルオープン記念展として、2025年6月28日から11月3日まで「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」を開催。報道陣向けの内覧会に参加させていただいたので、その様子を紹介します。

 

 

 

「佐藤雅彦」について

佐藤さんの自宅の机の前に29歳の時に貼ったというメモ(右)は必読:横浜美術館「佐藤雅彦展」展示風景

佐藤さんの自宅の机の前に29歳の時に貼ったというメモ(右)は必読:横浜美術館「佐藤雅彦展」展示風景

1954年生まれの佐藤雅彦さんは、東京大学教育学部を卒業後、広告代理店の電通に入社。CMプランナーとしてサントリー「モルツ」、湖池屋「スコーン」「ポリンキー」「ドンタコス」、NEC「バザールでござーる」などのヒットCMを生み出しました。

電通を退社後は、企画事務所を設立し、プレイステーションソフト「I.Q」、「だんご3兄弟」などジャンルを横断したコンテンツをヒットさせました。

1999年、慶應義塾大学環境情報学部の教授に就任。佐藤雅彦研究室の活動として、NHK教育テレビの幼児教育番組『ピタゴラスイッチ』を立ち上げます。

展示を通して“作り方”を紐解いていく

左から、横浜美術館館長 蔵屋美香さん、佐藤雅彦さん、横浜美術館主席学芸員/佐藤雅彦展企画 松永真太郎さん。グランドギャラリーに展示された作品、《計算の庭》(桐山孝司との共作)内にて

左から、横浜美術館館長 蔵屋美香さん、佐藤雅彦さん、横浜美術館主席学芸員/佐藤雅彦展企画 松永真太郎さん。グランドギャラリーに展示された作品、《計算の庭》(桐山孝司との共作)内にて

同展を担当した松永真太郎 主席学芸員は、「作品ほどは、“佐藤雅彦”という名は知られていない。本展では、40年の多様なジャンルに渡る創作活動の全貌を明らかにし、表現や作品に至るまでの思考・アイデア・創作プロセスを紹介しながら、“作り方”を紐解いていきます。展示方法についても、どうわかりやすく伝えるか、昨晩も新しいアイデアが出てきて、朝まで設営していました。構成も設営も佐藤さんが行った、“佐藤雅彦ディレクション展“ともいえる本展。展覧会自体が新たなメディアです」と、同展の特徴を紹介。

展示風景より。NEC「バザールでござーる」ほかプレミアム・ノベルティ展示

NEC「バザールでござーる」ほかプレミアム・ノベルティ展示:展示風景

佐藤雅彦さんは「40歳になって、CMをたくさん作ってわかったことは、“どうすれば、あることが伝わるのか。どうすれば、あることが分かるのか。”ということです。実は、キャラクターが苦手なのですが、伝えるために必要で、その結果がキャラクターだったというだけのこと。展示を通して、“作り方を作る” ”どうしたら分かってもらえるか”という、私が目指したことを理解していただけたらうれしいです」と、コメントしていました。

記憶に残るCMをはじめ40年にわたる創作活動の全貌が明らかに

第0章「方法論の萌芽」展示風景

第0章「方法論の萌芽」:展示風景

第0章「方法論の萌芽」では、何故か蒐集していた料金表や座席表、商品情報などを展示。それらを自らのグラフィック表現の基本ルールとしたことが明かされました。

第1章「ルールの確立」展示風景

第1章「ルールの確立」:展示風景

第1章「ルールの確立」では、佐藤さんが企画制作した約70本のCMを「シアター1」で見た後、シアター2で「音から作る」というCM作りの基本ルールなどを紹介。

第2章「ルールからトーンへ」展示風景

第2章「ルールからトーンへ」:展示風景

第2章「ルールからトーンへ」では、新たな表現方法「トーン」について、湖池屋「ポリンキー」、NEC「バザールでござーる」などのコンテンツを通して理解を深めます。

第2章「ルールからトーンへ」展示風景。奥は第3章「トーンがもたらした転機」のプレイステーションソフト『I.Q』(C)1997,1998 Sony Interactive Entertainment Inc.

第2章「ルールからトーンへ」:展示風景。奥は第3章「トーンがもたらした転機」のプレイステーションソフト『I.Q』(C)1997,1998 Sony Interactive Entertainment Inc.

第3章「トーンがもたらした転機」では、佐藤さんが手掛けたゲーム作品『I.Q』など1990年代後半の活動を紹介。その横のDシアターでは、『だんご3兄弟』の制作秘話と大ブームの裏側について映像で見ることができます。

第4章「佐藤雅彦と佐藤雅彦研究室」展示風景

第4章「佐藤雅彦と佐藤雅彦研究室」:展示風景

第4章「佐藤雅彦と佐藤雅彦研究室」では、佐藤さんが研究室のメンバーらとともに実践してきた2000年代以降の活動をプロジェクトごとに紹介。

「ピタゴラ装置」の現物(4台)も特別展示

「ピタゴラ装置」の現物(4台)も特別展示:展示風景

さらに、特別展示として、NHK教育テレビの大人気番組『ピタゴラスイッチ』に登場する「ピタゴラ装置」の現物を見られます。

ホワイエで楽しめる、インタラクティブアート《指紋の池》(桐山孝司との共作)。指を置くと自分の指紋が泳ぎだし、再び指を置くと指紋が一目散に自分の元に戻ってきます。奥は「勝手に広告」シリーズ。展示風景

ホワイエで楽しめる、インタラクティブアート《指紋の池》(桐山孝司との共作)。指を置くと自分の指紋が泳ぎだし、再び指を置くと指紋が一目散に自分の元に戻ってきます。奥は「勝手に広告」シリーズ:展示風景

2014年に開催された「指を置く」展 佐藤雅彦+齋藤達也の作品も展示(ホワイエ)。展示風景

2014年に開催された「指を置く」展 佐藤雅彦+齋藤達也の作品も展示(ホワイエ):展示風景

とにかく、文字から映像まで、ものすごい情報量! 多彩なジャンルのコンテンツから、何かしらのヒントが得られることと思います。時間をかけてご覧ください。

グランドギャラリーに展示された作品、《計算の庭》(桐山孝司との共作)は、首にかけたカードの数字とゲートの数字を計算しながら進み、最後に「73」になるように巡る作品。展示風景

グランドギャラリーに展示された作品、《計算の庭》(桐山孝司との共作)は、首にかけたカードの数字とゲートの数字を計算しながら進み、最後に「73」になるように巡る作品:展示風景

「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」(さとうまさひこてん あたらしいつくりかたとあたらしいわかりかた)概要

期間:2025年6月28日(土)~11月3日(月・祝)
場所:横浜美術館
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜
観覧料:一般2000円、大学生1600円、中学・高校生1000円、小学生以下 無料(企画展観覧当日に限り、企画展の観覧券でコレクション展も観覧可)
※券売所は混雑が予想されるため、公式サイトよりオンラインチケットの事前購入をおすすめします。今後は日時指定券の導入を予定しています

URL:https://yokohama.art.museum/exhibition/202506_satomasahiko/

横浜美術館コレクション展も同時開催

アーティストとひらく「戸田沙也加展 沈黙と花」(ギャラリー5)展示風景

「アーティストとひらく 戸田沙也加展 沈黙と花」(ギャラリー5)展示風景

同時開催の横浜美術館コレクション展では、会期中に終戦記念日を迎えることから、戦後80年特集展示「平和であることへの、控えめななにごとかを」と題し、戦争と美術をテーマとした作品で構成されています。

あわせて、奈良原一高「Blue Yokohama」と題し、休館中に新しく収蔵した作品の中から、写真家の奈良原一高が1959年に横浜を撮影した〈Blue Yokohama〉全43点を初展示。

同館収蔵の「名品」を紹介するハイライトのコーナーを初めて設置。「サルバドール・ダリ、ポール・セザンヌ、奈良美智」の作品が展示されています。これらの作品を親子で楽しむための「子ども解説」も。

ギャラリー5では、将来活躍が期待される新進アーティストを紹介する、「アーティストとひらく 戸田沙也加展 沈黙と花」も実施。

「佐藤雅彦展」とともに観覧ください。

期間:2025年6月28日(土)~11月3日(月・祝)
場所:横浜美術館
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜
観覧料:一般500円、大学・高校生300円、中学生100円、小学生以下 無料(企画展観覧当日に限り、企画展の観覧券でコレクション展も観覧可)

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