横浜ウォッチャー

All About横浜 ガイド・タナベのブログ。横浜で見た・聞いた・食べたことをさくっと綴ります。

横浜美術館で「石田尚志 渦まく光」が開催。絵が動く!?

3月28日から横浜美術館で「石田尚志 渦まく光」がはじまりました。絵画と映像を越境するアーティスト・石田尚志(いしだ たかし)さんの初の大規模な個展となります。

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作品の多くは、抽象的な線を少しずつ描いてコマ単位で撮影し、その反復作業によって創出される「動く絵(ムービング・ピクチャー)」。キャリア20年間の代表作を中心に4章(絵巻、音楽、身体、部屋と窓)仕立てで展示されています。

記者会見では、逢坂館長、石田尚志さん、主任学芸員・松永さんが登壇、同展の魅力について語りました。

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<逢坂館長>
横浜美術館では、ここのところ、若手の作家の個展にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。石田さんも1970年代生まれのアーティストです。いま、脂がのっている時期ではないかと思います。


グランドギャラリーの《海の壁─生成する庭》は、当館で4ヵ月間、滞在制作していただき、生まれた作品です。昨年、シンガポールの展覧会に出展し、キュレーターからの注目を集めました。私としては、石田さんの作品を、横浜から発信するという形で、国内だけでなくアジアでも紹介していきたいと考えています。

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▲グランドギャラリー《海の壁─生成する庭》2007


同時開催のコレクション展では、第3章<身体>に呼応し、「美術における身体」をテーマに現代美術作品を中心に紹介しています。「横浜“現代”美術館になっちゃった!?」と思われるかも……? 石田さんの詩的・音楽的な映像の世界と合わせてお楽しみいただければと思います。

横浜美術館では、今年度の開催予定が発表されています。次回は中国の現代美術作家の「蔡國強展:帰去来」、そして「横浜発 おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮」展、村上隆展と続きます。石田「たかし」、中島「きよし」、村上「たかし」ということで、今年度は、志たかく、きよく、を目指してまいります。よろしくお願いいたします。

<松永主任学芸員
2年前に企画がはじまり、ようやく開催にこぎつけることができました。石田さんは1972年生まれで─私と同い年なのですが─、1990年ごろから画家として活動を始められました。その数年後には、映像作品に着手されています。

今回、約30点の作品を展示していますが、初期の水彩画1点をのぞいて、すべて映像作品になります。石田さんの活動のベースは「描くこと」「描き続けること」だろうと考えます。時間をともなった絵画、永続性を表現するために石田さんは映像というメディアを使って作品を制作されています。

これまでにも小規模な個展は開催されていますが、初期から最新作まで、20年余のキャリアの代表作を集めた大規模な展覧会は初めてとなります。

その石田さんのキャリアを年代順ではなく、意識的に、あるいは無意識にテーマとしてきた<絵巻・音楽・身体・部屋、窓>を、ぶれていない、シリーズとしての作品を一緒に見せる展示としました。

「映像」の展示といえば、小さな空間で仕切って見せるのが一般的です。が、今回は初期から新作まで、同テーマの複数の映像をあえて大きな空間に並べるという手法をとりました。石田さんの20年のテーマ性をくっきりと浮かびあがらせることができるんじゃないかと思います。

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▲第1章<絵巻>のようす

石田さんの作品は、ずっと作り続けていく、というのが大きなテーマのひとつになっているのですが、一旦、作品をフィニッシュしたとしても、石田さんの中では、必ずしもフィニッシュではない可能性があります。暫定的なフィニッシュとして、また次の作品に移行するための予兆でもあります。未完の部分を補完するために、次の作品がある。それをお互いの作品が開いていって、補い合っている。そんな石田さんの作品の特徴を見せるために、あえて大きな空間に並べました。

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▲第3章<身体>のようす

最後(展示室6出口廊下)に、絵巻シリーズの最新作である《色の波の絵巻》を展示し、第一章<絵巻>にリピートするような、石田さんの作品の性質「反復」を表しました。また、同展のための3つの新作は、次の予兆が見える作品となっていますので、気にかけていただければと思います。

また、期間中、関連イベントを開催します。石田さんを紹介するにあたっては、展示という枠だけではおさまりません。パフォーマンス活動をされていて、また、話す、文章を書くなど「言葉の人」でもあります。石田さんと朋友である画家のO JUNさん、小林正人さんが登場するパフォーマンス(5月5日)やワークショップなどがありますので、展覧会と合わせてご参加ください。→こちら


<石田尚志さん>
1990年に「画家になるぞ」と、高校を中退して画家宣言をして、なぜか画家としての出発点として沖縄を選びました。沖縄で10代後半に個展を開きました。その時に描いた画が、第1章にあります。それを見ると、19歳のときからはじまった創作活動のすべてがそこに入っているように感じます。その作品を出発点として、自分の作品を振り返る機会を与えていただいて、たいへん感謝しております。で、その作品を横浜美術館から、共同開催いただく沖縄県立博物館・美術館へと20数年ぶりに持って行く、横浜の港から那覇港まで行くぞ、と。自分の中での大きな目標が達成できたという気持ちがあります。

逢坂館長からもお話がありましたが、2006から2007年にかけて横浜で公開制作した《海の壁─生成する庭》が、いろいろな展覧会を巡って、横浜に戻ってきました。そして、その作品が原点となる沖縄へと戻っていく、そんなような気持ちもあります。

横浜美術館は、作家活動のきっかけとなった場所でもあります。20代前半、新宿アルタ前で絵具を投げてパフォーマンスをしていた時期だったころだと思うのですが、「斎藤義重展」でカッコいいインスタレーションに出会い、大きな衝撃を受けました。第2章にある《フーガの技法》ですが、なぜ、四角形が回転したり、落下したり、そのようなイメージになったかといえば、「斎藤義重展」から始まった、学んだ、そんなような気がしています。そして、今回のコレクション展でその斎藤義重の作品が展示してあり、非常に感動しています。横浜美術館は、作る場所、出会う場所、振り返る場所といえます。そんな、いろいろな思いでこの日を迎えることができました。深く感謝しております。

そして、松永さんからもお話がありましたように、パフォーマンスをさせていただきます。美術館は生きている場所ですから、私も現存作家のひとりとして“生きていること”を表現したい、と今から気合いを入れて準備しております。

 

─── 記者会見は以上 ───

 

映像作品が多いので、じっくりと時間をとって楽しみたい展覧会です。が、抽象的なアニメーション作品なので、絵画のように鑑賞しても十分楽しめます。(でも、じっくり映像を見たくなるでしょう!)ひものような「ムニュムニュ」と呼ばれる動く線が登場するアニメーション、案外、子どもさんがハマるかもしれないなぁと思いました。

同時開催のコレクション展では、ヨコハマトリエンナーレ2014でアーティスティックディレクターをつとめた森村泰昌さんの作品が並び、現代美術の祭典が戻ってきたような雰囲気です。

 

4月4日(土)は、みなとみらいで行われる「みなとみらい21 さくらフェスタ2015」開催を記念し、誰でも観覧無料に! 気軽に作品を見ることができるチャンスです。ぜひお出かけください。


■石田尚志 渦まく光
期間:2015年3月28日(土)~5月31日(日)10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日:木曜日
観覧料:一般1500円、大学・高校生900円、中学生600円、小学生以下無料
※毎週土曜日は高校生以下無料(要学生証)
URL:http://yokohama.art.museum/special/2014/ishidatakashi/

※画像は2015年3月27日の記者内覧会にて撮影