横浜ウォッチャー

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廃材で作られたゴジラが圧巻!柳 幸典「ワンダリング・ポジション」1/7まで会期延長

世界的な現代美術家・柳 幸典さんの大規模個展「ワンダリング・ポジション」が話題を集めている(というか、複数人から「見てないんですか!?」と言われました 汗)とのことで、会期終了間近ながら足を運んでみました。場所は、横浜・みなとみらい「BankART Studio NYK」。全館を使った個展シリーズの第5弾とのことで、柳 幸典さんの30年に渡る作品約60点を一度に見られる展示会です。タイトルの「ワンダリング・ポジション」は、「さまよえる位置」という意味で、柳さんの変幻自在なメッセージを全館を使って表現しているかのよう。

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▲《Project Article 9》(2016)

 

私が一番衝撃を受けた作品は、1階に展示されている《Project Article 9》(2016)です。1994年に発表された作品を再現したもので、戦争放棄をうたった日本国憲法第9条の条文をバラバラにしてネオンサインにし、部屋いっぱいに並べてあります。いま、この時期にあらためて9条について考えさせられる意義。文節がバラバラになることで見えてくるさまざまな解釈。そして、突然パッと(文字が)消えてしまう恐怖。いろいろな思いが頭の中を巡り、しばし、空間の中にたたずんでしまいました。奥の壁には全文が掲示されています。

 

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▲2階展示室「Project Hinomaru」

 

9条を扱った作品は2階展示室にも。《The Forbidden Box》(2016)は、フタが開いた鉛の箱から、薄い布に描かれたキノコ雲が立ちのぼっている作品。布は二重になっていて、後ろには第9条の草案(英文)と現在の9条の条文、さらにそれを英訳したものが書かれています。それぞれの文章の微妙なニュアンスの違いを体感できます。

 

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▲2階「Ant Farm Project」

 

代表作のひとつ「Ant Farm Project」(2階)。プラスティックの箱の中に色砂で万国旗をデザインし、その中を縦横無尽に蟻が自由に歩き回るという作品。果たして、最も巣食われている国はどこか……ぜひお確かめください。同シリーズで、紙幣や日の丸をモチーフにした作品もあり。

 

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▲《ICARUS CELL》(2016)

 

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▲《ABSOLUTE DUD》(2016)

 

《ABSOLUTE DUD》(2016)は、広島型原爆をモチーフにした作品。その前にある、精錬所内の複雑な通路をした迷路のような《ICARUS CELL》(2016)から出てきた後に展示してあるので、いろいろな意味で驚きました。

 

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▲《Project God-zilla-Landscape with an Eye-》(2016)

 

さらにその先に、衝撃の作品が! 《Project God-zilla-Landscape with an Eye-》(2016)は、薄暗い部屋にゴジラの頭をかたどった作品が置かれています。よく見ると、ゴジラの頭はさまざまな廃棄物──産廃放射性物質津波で流されたものをイメージしたもの──でできています。ぎょろりと光る瞳の中には、さまざまな映像が写しだされて、これまた、いろいろなことを考えさせられます。

 

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▲《Ground Fish Print》(1990)

 

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▲《Ground Trandposition》(1987/2016)

 

上記のような作品から、政治的、社会的なメッセージを発信している作家さんかと思われるかもしれませんが、ユーモラスな一面もあるようです。1階カフェスペースには、大きな「たい焼き」の魚拓《Ground Fish Print》(1990)や大きな土の玉(フンコロガシが転がす糞の大きさを人間のスケールに置き換えたサイズらしいです)《Ground Trandposition》(1987/2016)が置かれており、若かりし柳さんの作品に出会えます。何とも壮大で、実にくだらない!? このふたつの作品と錦帯橋などで魚拓をとっている映像作品はカフェスペースになりますので、ドリンクを飲みながら見てみては。

 

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《Ground Trandposition》の企画書的なもの(上画像)も展示されていました(2階)。どのくらいのサイズならばトラックで運べるのか、どうやって運ぶのか、展示室にどうやって入れるのか、などなど、真剣に検討したことが垣間見えます。

 

12月25日までの会期でしたが、終了間近にじわじわと訪れる人が増えているとのことで、年明け1月7日(土)まで延長になりました。横浜市民/在住の方は900円で観覧できますので(一般1200円)、ご覧になってみては。

 

■柳 幸典「ワンダリング・ポジション」
会期:会期延長につき2017年1月7日まで
場所:BankART Studio NYK全館
開館時間:11:00~19:00
休館日:1月1日
入館料:一般 1200円 / 大学生・専門学生・横浜市在住者 900円 / 高校生・65歳以上 600円 ※リピーターは半券持参で500円、カタログ付もあり
URL:http://bankart1929.com/