横浜美術館で、企画展「複製技術と美術家たち―ピカソからウォーホールまで」が4月23日からはじまりました。この企画展は、版画、写真、書籍などの「複製技術」を通して美術が楽しめる時代に、ピカソ、マティス、ウォーホールなど、20世紀の欧米を中心とする美術家たちが、どのようなビジョンをもって作品をつくっていったのか、富士ゼロックス版画コレクションと横浜美術館の所蔵品によって検証するものです。
富士ゼロックスは、横浜・みなとみらいに主要な拠点を持つ企業。コピー機でご存知の通り、「ゼログラフィー」という印刷・複製技術を事業の中心に据えています。1988年以降、「版画もしくはそれに類する手段で複数制作されたもので、その時代の精神や文化を象徴する作品」を指針として、版画、写真、コピー・アート(ゼログラフィーによる作品)、アーティストブックなど、「富士ゼロックス版画コレクション」として約950点を擁しています。みなとみらいにある研究開発拠点ビル1階「富士ゼロックス・アートスペース」で定期的な展示が行われていますが、今回、そのコレクションから約100件、350点がまとまって展示されるのは初となります。
▲アンリ・マティス詩画集『ジャズ』より(富士ゼロックス版画コレクション)
それに加え、横浜美術館のコレクションの中から、双方に共通する代表的な美術家の作品を中心に、版画、写真、書籍など複製技術を用いた作品と、油彩画や彫刻など伝統的なメディアによる作品とを合わせた約500点が、5つの章立てで展示されます。
▲第1章 写真の登場と大画家たちの版画
企画展の根幹となっているのが、ドイツの哲学者、ヴァルター・ベンヤミンの論文『複製技術時代の芸術作品』。論文の中で、写真発明以降、複製技術の発展・普及によって、絵画や演劇などの伝統的な芸術作品にとって危機的状況が生まれた、と指摘しています。そのベンヤミンの写真や美術に関する考察や発言に注目し、著作中で言及した作例も多く展示されています。
▲第2章 普遍的スタイルを求めて
20世紀に登場した伝統的な美術のイメージを払拭するさまざまな潮流(キュビスム、フォーヴィスム、ダダ、シュルレアリスム、大量消費社会を反映したポップ・アートなど)を、「複製技術」という時代背景から見直すことで、芸術作品の危機に対する美術家たちの挑戦を読み解く企画展。なんと、5月5日(木・祝)は無料で入館できるので、訪れてみてはいかがでしょうか。写真や広告ポスター、デザインに興味がある方には特におすすめです。
▲第2章 普遍的スタイルを求めて 雑誌が展示されたコーナー
▲第5章 ゼログラフィーと美術家 1960年代から今日にいたるゼログラフィーを用いた作品で構成
企画展では、富士ゼロックスが開発した「Sky Deck Media Trek」で無料で音声ガイドを聞くことができます。事前にアプリをスマートフォンなどにダウンロードし、会場内では持参したイヤホンを使ってお聞きください。
■企画展「複製技術と美術家たち―ピカソからウォーホールまで」
開催期間:2016年4月23日(土)~6月5日(日)
場所:横浜美術館
時間:10:00~18:00 ※5月27日は20:30まで、入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜 ※5月5日は無料開館、5月6日は休館
料金:一般1300円 大学・高校生700円 65歳以上1200円
※小学生以下無料、障がい者手帳をお持ちの方と介護者1名は無料
※毎週土曜日は高校生以下無料