横浜美術館で開館30周年を記念した展覧会「横浜美術館開館30周年記念 Meet the Collection― アートと人と、美術館」が2019年4月13日(土)から始まりました。全館を使い、横浜美術館の1万2千点超のコレクションの中から、絵画、彫刻、版画、写真、映像、工芸など400点を超える作品が展示されています。
同展は、コレクションの中から名作を紹介するだけでなく「異質な要素」を加えたことが特長となっています。
「異質な要素」とは、4人のアーティスト<束芋(たばいも)、淺井裕介(あさい ゆうすけ)、今津景(いまづ けい)、菅木志雄(すが きしお)>をゲストとして迎え、各々の作品を、同館に収蔵されている多様な作品と同じ空間に並べ、作品同士の出会いの場を創出していること。
2部・全7章で構成されているうち、4章において4人のゲスト・アーティストとともに展示空間が作り上げられています。
第Ⅰ部 LIFE:生命のいとなみ
Ⅰ- ① こころをうつす ゲスト・アーティスト:束芋
Ⅰ- ② いのちの木 ゲスト・アーティスト:淺井裕介
Ⅰ- ③ まなざしの交差
Ⅰ- ④ あのとき、ここで
第Ⅱ部 WORLD:世界のかたち
Ⅱ- ① イメージをつなぐ ゲスト・アーティスト:今津 景
Ⅱ- ② モノからはじめる ゲスト・アーティスト:菅木志雄
Ⅱ- ③ ひろがる世界
ゲスト・アーティストは学芸員と協働で、コレクションの中からテーマに沿った作品を選び、選んだ作品の展示構成の中に、自作を組み込むという作業を行いました。
通常時は、建物の右半分で企画展、左半分でコレクション展を開催しているので、正面入り口を入って右側のエスカレーターを上がっていきます。
が、今回の展覧会は全館を使用しているため、従来とは逆回り(左のエスカレーターを上がっていく)に設定されています。原点回帰のような展覧会ということで、今回は開館時の順路に戻しました、とのこと。「展示室1」から順番に見て行くことになります。この順番で展示室を回るのは初めてです!
各章の展示内容について簡単に紹介します。7章のうち4章がゲスト・アーティストとのコラボレーションした展示となっています。
- 第1部 1章「こころをうつす」
- 第1部 2章「いのちの木」
- 第1部 3章「まなざしの交差」
- 第1部 4章「あのとき、ここで」
- 第2部 1章「イメージをつなぐ」
- 第2部 2章「モノからはじめる」
- 第2部 3章「ひろがる世界」
第1部 1章「こころをうつす」
浮世絵版画や墨絵の表現技法を参照しつつ、現代の技術を用いて映像インスタレーションとして表現する現代美術家・束芋(たばいも)さんがゲスト・アーティスト。近代化の時代に描かれた日本画の中の女性たちの姿に注目し、新旧の作品に共通して描かれている「人の心」にまつわる作品を紹介しています。
▲第1部 1章「こころをうつす」展示風景
▲束芋《あいたいせいじょせい》2015年 映像インスタレーション(5’33”ループ)[展示風景] ©Tabaimo / Courtesy of Gallery Koyanagi Photo by Kazuto Kakurai
第1部 2章「いのちの木」
土やテープ等で、壁面や路上にいきものたちの姿を描くインスタレーションで知られる淺井裕介さんをゲスト・アーティストとして迎えています。第2展示室の円形の壁を利用したダイナミックな作品は、横浜をはじめ各地の土を原料にした泥絵具を使い、市民ボランティアとともに約2週間かけて制作されました。
▲第1部 2章「いのちの木」展示風景
ミロ、シャガールなど動植物を主題とする同館のコレクションと、それらの作品をモチーフにして描かれた淺井さんの作品とのコラボレーションは、遠くから眺めても、近くで見ても新たな発見があるでしょう。
▲第1部 2章「いのちの木」展示風景
第1部 3章「まなざしの交差」
同館コレクションの中から、ジャンルミックスで「目」に着目した作品が並びます。うつろな目、大きく見開いた目……様々な感情が感じられる「目」だけでなく、芸術家の目、鑑賞者の目、いくつもの視線が時間を超えて出会う空間となっています。
▲第1部 3章「まなざしの交差」展示風景
第1部 4章「あのとき、ここで」
同館コレクションの半数近くを占める写真コレクションを中心に、20世紀以降の報道写真や絵画とともに展示されています。
▲第1部 4章「あのとき、ここで」展示風景
報道写真とは異なるアプローチで歴史の記録に取り組む、土田ヒロミ、米田知子などの作品も紹介。
▲第1部 4章「あのとき、ここで」展示風景
第2部 1章「イメージをつなぐ」
同館の西洋美術コレクションの中核をなす、20世紀の両大戦間に生まれたシュルレアリスムの作品群。それらに影響を受け、インターネットや画像編集ソフトなど現代のテクノロジーを用いて作品を制作する今津景さんをゲスト・アーティストとし、今津さんの巨大作品《Repatriation》2015年(227.3×486.0cm)をバックに、マン・レイ、エルンストといったシュルレアリスムの作家たちの作品やシュルレアリスムの影響を受けたネオダダ、ポップアートの作家たちの作品が配置されています。
▲第2部 1章「イメージをつなぐ」展示風景
第2部 2章「モノからはじめる」
木、土、石などを素材に用い、それらにほとんど手を加えることなく、展示される空間と組み合わせて作品とする「もの派」を代表する菅木志雄さんがゲスト・アーティスト。
▲菅木志雄《環空立》1999年[展示風景、展示室5とホワイエ]横浜美術館蔵 ©Kishio Suga
1999年に同館で開催された個展「菅木志雄-スタンス」で制作された《環空立(かんくうりつ)》と《散境端因(さんきょうはいん)》(美術館正面屋外に展示)との2点が20年ぶりに再展示されます。
近年の菅さんの作品と、1960年代末にはじまった「もの派」以前から素材とその組み合わせを表現の根幹においた作品との組み合わせもお楽しみください。
第2部 3章「ひろがる世界」
同展の最後を飾る同章では、限られた大きさのカンヴァスや造形の中に、無限のひろがりを感じさせる多様な世界像をもった作品群を紹介。長谷川潔《半開きの窓》から始まり、同《閉じた窓》で同章が終わるのも印象的。
▲第2部 3章「ひろがる世界」展示風景
▲ホワイエ「特集:宮川香山」展示風景
写真展示室では、平成とともに歩んできた横浜美術館の歴史を、企画展や様々な事業とともに振り返る資料などが展示されています。
アンケートコーナーもありますので、ぜひ作品との出会いについて感想を書いてみてください。
▲横浜美術館×大沢ワインズ「横浜美術館開館30周年記念ワイン」を販売。ラベルには横浜美術館コレクションから、白ワインはルネ・マグリットの《王様の美術館》、赤ワインは長谷川潔の《狐と葡萄(ラ・フォンテーヌ寓話)》が採用されています。白ワイン:ソーヴィニヨン・ブラン 2015年(3000円)、赤ワイン:ピノ・ノワール 2014年(3500円)※いずれも税別
期間中、アーティストトークなどのイベントも開催。くわしくは下記ページにて。
横浜美術館開館30周年記念
Meet the Collection ―アートと人と、美術館
期間:2019年4月13日(土)~6月23日(日)
場所:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)
開館時間:10:00~18:00(金・土〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木、5月7日(火) ※5月2日(木・休)は開館
料金:一般 1100円/65歳以上 1000円(要証明書、美術館券売所でのみ対応)/大学・高校生 700円/中学生 500円/小学生以下無料
※毎週土曜日は高校生以下無料(要生徒手帳、学生証)
※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料
※2019年6月2日(日)は観覧無料
電話:045-221-0300
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